日本薬理学雑誌
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N-(2-Mercapto-2-methylpropionyl)-L-cysteine(SA96)の薬理学的研究(第6報)
ラットにおける生体内Vitamin B6,金属および皮膚コラーゲンに及ぼす影響
山内 秀泰森河 康一桑野 光明疋田 光史藤村 健一堀内 正人植村 攻磯 正
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1985 年 86 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

N-(2-mercapto-2-methylpropionyl)-L-cysteine(SA96)およびその主要代謝物であるN-[2-methyl-2-(methylthio)propionyl]-L-cysteine(SA679)のラットにおける生体内vitamin B6(VB6),金属皮膚コラーゲンに及ぼす影響を,D-penicillamine(D-Pc)を比較対照薬として検討した.SA96は30 mg/kgおよび150 mg/kgの28日間連日経口投与によって肝臓中および血清中VB6量に対して全く影響を及ぼさなかったが,600 mg/kgでは肝臓中VB6量のみ軽度低下させた.またSA679も600 mg/kgで肝臓中VB6量の軽度低下作用を示した.一方,D-Pcは150 mg/kgおよび600 mg/kgの28日間連日経口投与により肝臓中および血清中VB6量を顕著に低下させた.尿中VB6排泄に対しては,SA96,SA679およびD-Pc共に影響を与えなかった.SA96およびSA679とpyridoxal-5-phosphateとのin vitroにおける結合体形成作用は,D-Pcに比べてはるかに弱いものであった.また,金属に対してSA96は150 mg/kgおよび600 mg/kgでCu,Znの尿中排泄を増加させ,肝臓および血清中Cu濃度を減少させたが,血清中Zn濃度に対しては逆に増加作用を示し,D-Pcと同様な作用態度を示した.しかし,SA96のこれら金属に対する作用はD-Pcに比較して極めて弱いものであった.皮膚コラーゲンの可溶性および不溶性分画に対して,SA96およびSA679はほとんど影響を及ぼさなかったが,D-Pcは可溶性コラーゲンを顕著に増加させ,600 mg/kgでは不溶性コラーゲンの減少をも認めた.これらの成績より,SA96は薬効用量においてはD-Pcと異なり,生体内VB6,金属およびコラーゲンに対して影響を与えないものと考えられた.

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